この記事は母が35歳、私が8歳の時の話です。
無計画な親父のせいで小学校3年生の途中で急に埼玉県から千葉県へと引っ越すことになった私達家族。
これまで転校生を迎える立場でしかなかった自分が、まさか引っ越し先で転校生として迎えられるなんて、夢にも思いませんでしたが、どうしても埼玉に残ることができず新しい土地で暮らすことになったのです。
ですが、ここはとんでもないところだったのです。
今度の借家は2階建ての一軒屋だったが・・・
家を買うお金も無い(親父は貯金をするという意識は全く無い)ため、また借家へと引っ越すことになった私達家族。
1階玄関を開けると、右側にトイレ、そして左側に階段、2mほどの廊下を進むとリビング+台所(6畳)、その隣に和室(6畳)。
2階は階段を上がって右側に和室(6畳)、左側に洋室(フローリング6畳)という間取りでした。
北から南へと続く道路の一番南側で、且つ北向き玄関だったので、母はとても嫌がっていましたが、
今にも崩れそうな平屋の借家から、2階建ての家に住むことになったので、ずっと平屋で2階建ての家にあこがれていた私はとても嬉しかったです。
「家の中に階段があって、登れば2階へいける!」別に普通のことですが、当時の私にとってはすごく魅力を感じていました。
またトイレも汲み取り式ではありましたが、簡易水洗トイレで清潔感があったため、子供ながらに「いいところに引っ越してきたんだな~」と思っていたものの、大きな欠点があったのです。
それは、上水道が無く「井戸水」・・・
鉄分が多い上に臭くて洗濯物が黄ばむ井戸水
皆さんは井戸水といわれると、どんなイメージがありますか?
一般的には、
- 冷たい
- 美味しい
といったポジティブなイメージを持っていると思います。
私も同じで、引っ越したばかりの頃は井戸水と聞いて「冷たくて美味しいんだろうな~」と思っていましたが。
母親にいたっては、「水道代がかからないから助かる」とも言っていましたが、コレがとんでもない井戸水だったのです。
まず驚いたのは、その臭い。
卵が腐ったような独特の臭いで、更に風呂に水をためると黄色く濁って入浴するのがイヤになるくらいでした。
そして極めつけは、鉄分が多くて洗濯物が黄ばんでしまうという最悪の水質環境だったのです。
沸かせば臭いが取れますが、飲んでも鉄の味がして飲料水としては適さないのがすぐに分かりました。
井戸水で育った母親は「井戸だから最初はこんな臭いがするんだよ。しばらく使ったら臭くなくなるから」というのでそれを信じていましたが、いつまでたっても臭いは改善されません。
それから我が家は、貧乏なのにもかかわらず、水を飲まないわけにはいかないので、当時珍しかったミネラルウォーターの購入をすることになってしまったのです。
鉄分が多くて白い体操服や雑巾が黄ばむ
引越し先の小学校は登下校は勿論、日中も学校にいる間は体操服で過ごさなければいけない規則だったため、すぐに汚れてしまいます。
毎日毎日体操服を洗濯するのですが、鉄分が多い井戸水のせいで真っ白になるはずの体操服が、どんどん黄ばんでいくのです。
体操服だけではありません。雑巾やタオル、靴下など我が家の真っ白かった衣類はすべて黄ばんでしまいます。
小学校高学年になると、「お前の服ってさ、どうしてそんなに黄色いの?」と聞かれるようになったため、「ウチの水が悪くてさ。鉄分が多い井戸水なんだ。」
と答えると、みんな「えー!?そんなのあるの?」と驚いていました。
でも正直恥ずかしかったですよ。だって、みんな白い体操服なのに自分だけ黄色いんですもん。全然笑えなかったです。
おかしいと感じたのは当然ですが、近所も井戸水を使用してるため、同じように服が黄ばんで困っているのではないかと母親は聞いてみたそうですが、他の家は臭いも無く普通に飲めるため、まったく問題ないといわれたそうです。
物件を見た親父は井戸水について調べなかった
この物件を探してきたのは親父ですが、仕事場に近くて家賃が安いという条件だけで家を探したため、井戸水と聞いても水質検査の依頼はしませんでした。
水質チェックなんてしないよというのが当たり前かも知れませんが、井戸水だったのであればしっかりとチェックしてもらいたかったと今でも思います。
駅も店も無い。あるのは牛小屋だけ
引っ越してもうひとつ感じたのは、とにかく不便な土地だということ。
電車も通っていないところなので、駅が無いのは当たり前。更にスーパーの場所も分からず、毎日車で20分掛けて買い物に行っていました。
ここは品揃えが悪いスーパーでしたが、空き缶のリサイクルボックスがあり、缶を入れると割引券がもらえたので、落ちている空き缶を集めて来ては、ボックスに入れて券を集めていたのを覚えています。
後にすぐ近所にスーパーがあることを教えてもらいましたが、ここも品揃えが悪く満足なおかずが買えないことも。
コンビニも無く、おかずが買えないと親父がDVをするため、母は小さい私達を連れてスーパーを何件も回ることがありました。
もうひとつ困ったのは、自宅のすぐ後ろに牛舎(牛小屋)があり、窓を開けていると風向き次第で臭いが部屋の中に入ってきて大変なことに。
これは窓を閉めればいいのですが、エアコンを買えなかった我が家は夏場になると、窓を開けるしかなくとにかく臭いがきつかった。
しかし、そんなときに限って親父が「臭いからどうにかしろ!」と大声で怒鳴り散らすのです。
「どうしようもないし、この家を選んだのはお前だろ」と心の中で叫びながら、どうすればいいのか分からなかったです。
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