私が小学校6年生になった1991年の時の話。
毎月月末にもらえる500円のお小遣いを握り締めて、小学校4年生の弟(10歳)と二人でガンプラ(ガンダムのプラモデル)を買いに行こうとしたときに起きた出来事です。
この日も親父は母一人で働かせて朝からパチンコに行っていましたが、勝てずに14:00頃に切り上げ会社へ帰ってきました。
勢いよく車をとばして帰ってきたと思ったら、バタンと力任せに車のドアを閉めます。
その仕草から私は思いました。「これは機嫌が悪い」と。
12歳の私ですら親父の性格に疑問を持っているにもかかわらず、当の本人は何も気付かないのでもはや改善することも出来ません。
しかも運が悪いことに機械の故障が頻発。すると母が直せないのを分かっていてもわざとらしく、
「てめー。オレが居ない間になにやってたんだ!全部調子悪いじゃねーか!」と機械の故障を母のせいにし、キレて怒鳴ります。
こんなことを子供の前で平気でいうとんでもない神経の持ち主なんです。
・・・工場内は機械の故障を告げるアラームがなり響き、親父の怒りは更にヒートアップ。一緒に居た妹は大声で泣いていました。
終いには工具を床に叩きつけ母を叱責。更に殴りかかろうとしたため、身の危険を感じた母と私達は一緒に工場の外へと逃げたのです。
怒り狂いDVする親父から逃げる妹と母
工場を出て数十メートル歩いたところで、ガシャンと音がしたため振り返ると、母と妹を乗せた自転車がひっくり返っていました。
遠くからその光景を見た私と弟は、母が誤って転んだのだと判断し引き返しませんでした。
この判断が大きな間違いだった
工場から自宅へは小学6年生の足でおよそ10分。周りは畑と田んぼだらけの見慣れた道ですが、あの時はとても長い道のりに感じました。
どうしてもプラモデルが買いたい
途中、親父が追いかけてこないか何度も何度も後ろを振り返りましたが、親父は後を追いかけてきません。
自宅に戻った私と弟は落ち着きを取り戻すと同時に、さっきまで忘れていたプラモデルのことを思い出ました。
「お母さんが帰ってくるまで待っていた方が良い事。お父さんが怒って大変なことになっている。でもプラモデルも欲しい。」
そんなことを弟と言いあっていましたが、どうしてもプラモデルが欲しくて近所の模型店に買いに行ってしまったのです。
もともと母はお小遣いでプラモデルを買う事を反対していました。そのため私は「そんなものばかり買ってないで、少しは勉強の役立つものを買いなさい」といつも怒られてばかり。
毎回「自分の小遣いで買ってるんだからいいじゃん」と反論しましたがいい顔はしません。
「今日も早く造って隠さないと怒られるぞ」と弟と二人で作っていると・・・。
八つ当たりだけでは気が済まず母の前歯まで折るDV行為
カチャっと玄関ドアを開ける音がすると、母はそのまま私達の居る2階へと上がっきました。
「ヤバイ。プラモデルがお母さんに見つかっちゃう」二人で焦っていると、
折れた前歯を4本右手に持った母が「ただいま。お母さん、お父さんに歯を折られちゃったから、今から歯医者さんでくっつけてもらってくるね。」
そう言い残し泣いている妹と歯医者へ行こうとする母。
ビックリした私は「どうしたのその歯。お父さんにやられたんだね。大丈夫なの?本当に大丈夫なの?治るよね?」と何度も声をかけました。
すると「うん。大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」と笑って答えたのです。
その母の顔を見た瞬間「お母さんがこんなに辛くて痛い思いをしているのに、どうしてオレはプラモデルなんか買いに行っちゃったんだ。さっきオレが引き返していれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに・・・」
私と弟が工場から家に帰るまでの間、親父は物に当たった挙句、腹の虫が収まらなかったため自転車で逃げようとした母と妹にまで当たり、前歯を折る怪我を負わせた。
あの時聞こえた自転車が倒れたのは、逃げようとしてコケたんじゃなくて、親父に無理やり倒されたんだ。
それでこんな大怪我をしたのに、母を助けてあげられなかったことが申し訳なくて悲しくなりました・・・。
妹は自転車を倒されたとき、荷台の子供乗せにのっていましたが幸いかすり傷一つ無かったです。
ですが、恐怖のあまりずっと泣いていました。
転んで前歯を折ったと歯医者に「嘘」を伝えた
歯医者に行ってから40分ほどして帰宅した母。
すぐに具合を聞くと「見て。ちゃんとくっつけてもらえたよ。応急処置だから、しばらく通院してくださいって言われたけど、お金も5,000円で治せたからよかったよ」と母。
「歯医者さんにはお父さんにやられたって言ったの?」と聞き返すと「そんなこと言ってないし、言えないから自転車で転んで歯が折れたってことにしたんだ」と嘘を言ったのです。
それを聞いた時、「転んで前歯が折れた」と素直に受け止め淡々と治療をする歯医者と、「DV(ドメスティックバイオレンス)を受けたと本当のことを言わずに、悲しみや苦しみを隠して治療を受ける母親の心」に大きな隔たりというかギャップを感じました。
そしてDVで痛くて辛い思いをしている事を真剣に考えず、母の嫌いなプラモデルを買ってしまった自分の行いにも後悔したのです。
謝罪も反省もしないDV加害者の親父を恨む
昼間からパチンコに出かけ、帰ってきたら母にDVで当り散らした親父。
この日、歯医者から帰宅した母は工場へは戻らず自宅で安静にしていました。
しかし、夕食を作らなければまた何をされるか分からないので、折れた歯を気にしながら準備をしていると親父が帰ってきました。
私と弟、妹は「お父さんまだ怒ってるんじゃないの・・・」と恐怖に怯えていましたがそんな様子は全く無し。
というより、自分がDVを犯したことすら忘れているような感じでした。
母は前歯を折る怪我をしているのにそれを親父に言いません。仕返しが恐くて言えないんですよね。
親父はそれを知ってか知らずか、いつもどおり偉そうにあぐらをかいて座り「ビール」と要求。
うまそうにゴクゴクと音をたててビールを飲むその姿を見た小学校6年生の私の心には、親父に対する恨みと憎しみしかありませんでした。
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